スティーブンキング原作といえば、今まではホラー映画が定番でした。
ですがこの作品は、ホラーとは違う、切なくて最後に人間が大好きになる、感動映画に仕上がっています。
今回は、その魅力を何点かにまとめてお伝えします。
「ショーシャンクの空に」の意味は?
映画作品名となっている「ショーシャンク」。これは、アメリカにある刑務所の名称です。
主に、刑期の長い囚人が懲役についており、脱獄は不可能と言われている劣悪な刑務所です。
そんな刑務所ですから、入った囚人たちは何の希望も、夢も抱くことなく、ただひたすら日々を送っていました。
たまにある仮釈放の面接にさえも、全く心が動かされることがないために、更生したとも評価されず、単調な日々を黙って囚人たちは耐えていました。
モーガン・フリーマン演じる囚人レッドも、またこのショーシャンク刑務所に服役している囚人のひとりで、他の囚人たちと同様に、ただ惰性で日々を過ごしていました。
今日も、明日も同じ日々で、自分は運命を変えることなんてできやしない。できるのはせいぜい、刑務所の中の仕事だけで、外に出るなんて夢のまた夢。
レッドはそう思い、ゆっくりと絶望の日々を送っていました。ある男、アンディが囚人としてやってくるまでは。
ここではまず、ショーシャンクが未来のない刑務所であることと、囚人たちに全く生きる希望がないということが、繰り替えされます。
主人公のアンディは何を変えるか
主人公であるアンディこそが、この映画「ショーシャンクの空に」の魅力を引き立てる役者の一人です。
そしてモーガン・フリーマンの演じる囚人エリスの変化も、映画「ショーシャンクの空に」の魅力のひとつでしょう。
新人としてのアンディは、何故かこの刑務所に入っても希望を捨てないのです。どういうわけか、彼は絶対に外に出てやるという意思がありました。
実は彼は、無実の罪を着せられた囚人だったのです。
小さなハンマーを貸したことから、仲良くなるレッドとアンディ。
アンディは次第に囚人たちに認められ、暴力的な刑務官として知られるハドリーからも、一目置かれる存在となります。
ここにも、映画「ショーシャンクの空に」の魅力があります。
いじめられていたアンディが、次第に仲間を得て、みんなの輪の中に加わっていくようになる姿は、見ていてとてもほっとしたものです。
そしてここでもレッドの控えめな態度と、小さな気遣いの優しさがきらりと光っています。
大げさではない、けれどしっかりとした友情の芽生えが見られるのも、この映画の魅力といえるでしょう。
刑務所の外では生きていけないのか?
アンディは、図書係に服務することになり、50年も服役している老人ブルックスと友達になります。しかしアンディが図書係を命じられたのには、理由がありました。
ショーシャンク刑務所の刑務官と、所長の不正蓄財の隠ぺいのための会計を、アンディに行わせるためです。
アンディはそれを承知し、優秀な会計士として働きます。そしてレッドとともに、ブルックスに仮釈放の申請を受けるように説得します。
ブルックスは「外に出るのは怖い」と拒否しますが、レッドとアンディの強い勧めに負けて、仮釈放されることになりました。
しかし、老ブルックスを待っていたのは、絶望でした。彼には家もなく、仕事もありません。
塀の中しか知らずに生きたブルックスは、もう社会にとけこんでいけるほどの力は、残っていませんでした。
ブルックスはアンディとレッドに向けて、感謝の手紙をしたためると、自殺してしまいました。
おそらくこのシーンは、観客の魂をゆさぶるシーンであったことでしょう。老ブルックスは、どうすればよかったのか。
手紙を受け取ったアンディは、「誰にでも希望は必要だ」と言いますが、レッドは冷たく「ここにはそんなもの、必要ない」と言い放ちました。
アンディが最後に見せた「希望」
新たな服役囚トミーと仲良くなったアンディは、恐ろしい事実を聞かされます。なんとトミーは、アンディの事件の真犯人を知っているというのです。
アンディは早速再審を求め、所長に強く迫ります。しかし不正経理を知っているアンディを、所長は手放すわけにはいきません。
アンディを懲罰房に入れ、真犯人を知っているトミーを射殺してしまいます。
さすがに絶望したと思われるアンディは、ふさぎがちになり、レッドらは彼が自殺するのではと心配します。
ところが、ある朝点呼を取ってみると、アンディから返事がありません。 アンディは、脱走したのです。
レッドからもらったあの小さいハンマーで、彼はずっと壁に穴を掘り続けていたのです。
そしてその穴には、人気女優のポスターを貼っておき、誰の目にもわからないようにしていたのでした。
嵐の中、外に出たアンディは、強い雨を浴びながら自由を感じとり、涙します。このとき、観客も同時に涙するのです。
希望は捨ててはいけないと、あれほど強く言っていたアンディは結局、最後まで希望を捨ててはいませんでした。
その情景が、この映画の最も感動する名シーンとなっています。
その後
レッドはその後、自らも希望を抱き仮釈放となります。そしてアンディとの約束の地に向かうところで、映画の幕が下ります。
映画「ショーシャンクの空に」は、全く希望を抱くことができない状況でも、希望を抱くことの大切さ、強さを描いているところに集約されています。
たとえ嵐の中であっても、希望があればいつかは自由を感じとることができるのです。