2000年のシドニーオリンピックは、イアンソープさんの活躍などで大いに盛り上がりましたが、そんな中、100メートル自由形に登場したある選手の泳ぎに、世界中の人が注目し、拍手を送りました。
その選手はエリック・ムサンバニという選手です。
世界的に珍しいアフリカ出身の水泳選手
エリック・ムサンバニさんは赤道ギニア出身の水泳選手であり、元々はバスケットボールをしている人でした。
オリンピックに出場するためには、標準記録というものをクリアしなければ出場することはできません。しかし、各国に与えられている特別枠を行使して出場できることは可能であり、エリック・ムサンバニさんも、このルールによってオリンピックに出場することができました。
エリック・ムサンバニさんの水泳に関する略歴を見ると、本番までに与えられた時間は1年足らず、しかも、それまでターンの練習すらできないという状況だったのです。
それもそのはず、赤道ギニアにはプールがほとんどなく、一番長いプールは赤道ギニアのホテルにあったプールで、しかも17メートルの長さしかなく、50メートルプールはおろか、25メートルプールもないような環境で、練習をしなければなりませんでした。
練習する時間も、ホテルにお願いして数時間借りて行い、シドニーで50メートルプールを見るまで1回も見たことがないような状況です。
エリック・ムサンバニさんはそんな中、オリンピックの舞台で泳ぐことになったのですが、当日は他の選手がフライングで失格し、なんと1人で泳ぐことになり、すべての観客の視線を浴びながら泳ぐことになったというのも、ポイントです。
エリック・ムサンバニさんが泳ぐことになった経緯
略歴を見てもわかるように、エリック・ムサンバニさんはバスケットボールの選手であり、水泳選手ではありません。にもかかわらず、なぜ泳ぐことになったのかですが、赤道ギニアそのものの事情というものが関係していました。
赤道ギニアは石油産出国であるため、経済的には成長が見られるものの、人口は70万人程度しかおらず、スポーツに関する支援を国が出来るような状態ではありませんでした。
エリック・ムサンバニさんが、水泳選手としてオリンピックに出ることで、何かしらの支援を受けることができるのではないかという思惑から出場することになり、女性選手も50メートル自由形に出てくることになりました。
そうしたこともあり、エリック・ムサンバニさんは泳ぐことになりますが、この当初のもくろみは、エリック・ムサンバニさんと同じ組の選手たちが、フライングで失格になったことで現実となります。
泳ぎのフォームは到底100メートルを泳ぐとは思えないほどバラバラであったものの、100メートルをなんとか泳ぎきり、赤道ギニアの記録を更新する泳ぎとなりました。
しかし、2分をなんとか切るタイムだったこともあり、当時の世界記録の倍以上の時間がかかったことや、200メートルの世界記録より遅いばかりか、1896年に行われた第1回オリンピックでも、メダルを獲得できないようなタイムであったことも有名です。
オリンピックは参加することに意義があるという言葉は、この当時はあまり聞かれませんでしたが、エリック・ムサンバニさんの活躍は、まさにそれを体現したかのようなものとなっています。
シドニーから4年後に見せた驚異的なタイム
エリック・ムサンバニさんの泳ぎによって、日本だけでなく、多くの国のマスコミがエリック・ムサンバニさんのところに殺到し、インタビューをすることになり、赤道ギニアの状況が明らかになりました。
すると、自分たちが支援したいという企業が殺到し、練習環境は大きく改善し、エリック・ムサンバニさんは、競泳用具や資金の提供などを受けることができ、練習に打ち込めるようになっています。
とはいえ、練習する場所がプールから川になり、一見するとあまり環境が変わらないように感じるものの、実際は環境が改善され、2001年福岡で行われた世界水泳ではフォームが見違えるようによくなり、その後はスペインで練習を重ね、自己新記録を更新し続けていきます。
そして、2004年のアテネオリンピックに出場しようとしたものの、ビザの関係で出場できませんでしたが、その時には57秒を切るタイムを出すようになっていました。
4年間で、1分近くタイムを縮めたとしても、日本記録に比べればそれでも10秒近く遅いタイムです。しかし、地道に努力を重ね、タイムを縮めたという事実は賞賛に値し、あの時、必死に泳ぎ、なんとかして100メートルを泳ぎきった人とは思えないタイムになったというのは、すばらしいの一言です。
最近のエリック・ムサンバニさんの略歴ですが、今は赤道ギニアで奥さんと子供に囲まれながら生活をしています。
なんと、オリンピックに出る水泳選手を育成するために指導していることが明らかになっており、赤道ギニアで初の水泳におけるメダルを獲得すべく、エリック・ムサンバニさん自身が指導し、未来のメダリストが出ることを期待しないわけにはいかない状況です。
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