お笑いの人が書く本なんて、大したことないと思っていたら、大間違いです。お笑い芸人だからこそ、人間観察力が優れているがゆえに、深い内容の本を書くことができるものです。
今回は、お笑い芸人さんの書いた深い、哲学を感じさせる本を紹介します。
今読んでもスゴイ松本人志「遺書」
1994年、お笑い芸人コンビダウンタウンが有名となり、彼らの人気が絶頂期を迎えたときの、松本人志さんの書籍です。
当時の、週刊朝日で連載していたコラムを一冊にまとめたものですが、出版されたときはその内容に、「さすが」の声が飛んだものでした。
「漫才とは、舞台でふたりが面白い話をするものだ。チンピラの立ち話でけっこうだ」(巨匠、横山やすしに「お前たちのは漫才ではない」と説教された際のこと)
「結婚することで何か得するの?ガキができたら、それこそ大変やで」 「(笑っていいとものお客さんに対して)ボケをしているのに、変なタイミングで声援しやがる」 などなど、とがった発言がたくさんでした。
しかし全エピソード通じて語られるのは、自分はあくまで芸人であり、それ以上でもそれ以下でもないということ。お笑いのためになると自分が信じられるものであれば、なんであれ取り入れるというものでした。
お笑いに対してのストイックな姿勢が、全編通じて語られています。今読んでも、何かを極めたいと思う人間は、ここまで厳しく物事を追及しなければならないのだということを、教えてくれます。
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世界のキタノは本もすごい「新しい道徳」
近年、教養番組の司会業やコメンテーターとしても活躍中のビートたけしさんですが、2015年に出版されたこの本は、それまでのビートたけし本の要点を上手にまとめた一冊です。
非常に読みやすいのにも関わらず、「なるほど」という部分がたくさんあります。ヒトとしてどうあるべきか、知性とはなにか、教養というものはなぜ必要なのかを、ビートたけし口語体で書いた本です。
お笑いの重鎮でありながら、明治大学中退という高学歴の持ち主。しかし実際ビートたけしさんが暮らしたのは、下町の貧乏な家でした。
兄弟全員が母親に勉強をたたきこまれ、芸人を目指すビートたけしさんは、完全に異端児でした。
その下地を踏まえて読んでみると、何故ビートたけしさんがあれほど賞を獲得できる作品を監督できるのか、そしてあれほどのお笑いブームを巻き起こすことができたのか、納得できるところがあります。
最後のほうには、現代社会への皮肉あり、風刺なお笑いありの本となっており、非常に楽しめる一冊となっています。実は、深い人間観察のまなざしがあることに気がつかされる本です。
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芸人仏教「えてこでもわかる笑い飯哲夫訳般若心経」
笑い飯は、M-1グランプリ常連のダブルボケコンビ。実はこの哲夫さん、関西学院大学という高学歴の持ち主です。
大学では西洋哲学を専攻し、学んでいたそうですが、内容に満足できなかったところ仏教に触れ、その内容に心魅かれたとのことです。
あくまで「笑い飯哲夫」のフィルターを通じてですが、常人ではなかなか触れる機会が少なく、理解もしにくい「般若心経」を、簡単かつ明快に説明しています。
哲夫さんの考えた「お笑い」の考えと、仏教の提唱する「慈悲」の世界に、共通項があると哲夫さんは述べています。それはどういうことなのか、ぜひ本書でご確認ください。
シンプルでわかりやすく、誰にでも読みやすい一冊となっています。
お笑い芸人であるのに、ここまで仏教に対して造詣が深く、また本人にも非常に影響していることを考えると、人間は本当に見た目や職業だけで決まるものではないということが、よくわかります。
笑い飯哲夫さんは、実はこのほかにも般若心経や仏教に対しての本を、深いものから解説書まで幅広く出版されていますので、知識の深さがうかがえます。
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苦悩の若林「社会人大学人見知り学部卒業見込み」
とにかくさまざまな本を読んでいるのが、オードリーの若林正恭さんです。ついに、ようやく自分の本を出版したのが、この一冊です。
出版業界が、売れ行き不振で悩んでいるのにも関わらず、通常版のほうは重版がかかり、最終的には完全版として文庫版が出版されました。
非常に中身は、熱い本です。シンプルに人見知りの苦悩や、趣味についての考えも書かれていますが、実は全てお笑いのためという、徹底した考えがあります。
売れない時代のエピソードからも、売れてからの話でも、それは同じことです。もちろん相方「春日」さんについての話もあり、オードリーというコンビは、若林さんの苦悩の上に成立していることがわかります。
好ましいのは、初々しい文体です。この、ゴーストライターでは出せないであろう言葉のつたなさ、そしてそれでも自分の頭の考えを、必死に文章化しようとする若林さんの情熱に心打たれます。
ちなみに新作「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」では、その文章力が格段にアップしています。
どんなに苦しくても、お笑いをやるしかない男の苦悩の一冊です。
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最後に
お笑いにおいて、難しい哲学は必要ないように思われますが、演じる彼らのほうは、観客の反応から世間ウケする芸風まで、いろいろ考えているものです。
その秘められた心と思考は、このように類まれな本を生み出すことがあります。
気になるものは、ぜひご一読ください。
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