日本で昔から非常に数多く制作されてきている特撮作品の中では、ヒーローがメインだったり、怪獣がメインだったりするものは多いのですが、怪人をメインとしたものの割合はそれほど多くはありません。
しかし数は多くなくても、多くのファンの心に残っている名作が、特に昔の作品の中にはいくつも存在しています。
ヒーローや怪獣がメインの作品とは異なるテイストが味わえる
例えば、宇宙からやってきた超人や、科学を駆使した戦闘服に身を包んだ人間、悪の組織によって改造されてしまった改造人間といったように、ヒーローと一口に言っても色々なタイプはあるのですが、基本的にそのどれもが、自分たちの持つ特殊な能力を人々のため、平和のために役立てようとします。
そういった正義の立場にあるという点が、多くのヒーローに共通する大きな特徴です。
その点、怪人はいわゆる悪の立場にある場合が多いという点が大きな特徴となります。
もちろん正義や悪の基準は人によって異なるでしょうが、少なくとも怪人は自分たちの力を世のため人のために役立てることはしないでしょう。
そういったアンチヒーロー的なテイストが味わえるという点は、大きな魅力となっています。
また怪獣は基本的に、人間とはかなり異なる形状をしており、多くの場合は言葉は通じませんし、思考も人間とは大きく違います。
そういった部分にバリエーションの豊かさが出せるという点は、怪獣ものの大きな特徴と言えるでしょう。
それと比べて、怪人は人間に近い形状をしているのが一般的で、また思考が近く言葉も通じる場合も少なくありません。
そういった点は、人間と会話をしたり、自分たちの考え方をぶつけ合ったり、人間味のある犯罪に手を染めたりと、怪獣ではできないことができるという魅力につながります。
少し大人向けのストーリーが楽しめる
上にあげたような怪人の特徴から考えると、怪人をメインとした特撮作品は、ヒーローものや怪獣ものよりも、少し大人向けのストーリーを展開させやすいと言えるでしょう。
もちろん現実にはいない怪人を、映像として見せるための特撮技術の面白さも見どころではあるのですが、ある程度の年齢になると、そういったストーリーの面白さにも心を引かれるという人は少なくないはずです。
吸血鬼ゴケミドロ
そういったストーリーのわかりやすい例としては、「吸血鬼ゴケミドロ」はうってつけの作品だと言えます。
飛行機事故によって山中に孤立してしまった、年齢も職業も様々な男女が、宇宙から訪れた寄生生物によって一人の男が吸血鬼のような怪人になってしまったことをきっかけに、ドロドロとしていた人間ドラマを繰り広げることになるという異色作です。
この作品では、政治家と彼に取り入っている会社経営者夫妻の関係が、特に大人向けの空気を放っています。
実は経営者の妻は政治家の愛人で、夫はそのことを自分の立場を良くするために利用しているという複雑な関係です。
彼らの関係が吸血鬼とのかかわりの中で変化していく様子は、非常に見ごたえのあるドラマとなっています。
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マタンゴ
極限状態におけるドロドロとした大人向けの人間ドラマは、「マタンゴ」という作品でも上手く表現されています。
お金持ちの息子のヨットに乗り海で遊んでいたグループが、嵐によって無人島に流れ着いてしまいました。
彼らはそこで人間を怪人に変身させてしまうキノコと出会い、それを食べた者が次々と怪人と化していくというのがそのあらすじです。
食料がほとんどないという状況において、自分が生き残るために醜い争いを繰り広げたり、空腹に耐えかねて危険なキノコに手を出してしまうというストーリーは、大人が見てこそ面白さがよく理解できるのではないでしょうか。
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元が人間だということによる悲劇性がある
特撮作品における怪人の中には、生まれながらに人間ではないという場合もないわけではありませんが、元々は人間だったのが、何らかの事情で怪人になる場合が大きな割合を占めています。
元は人間であったのに、自分の意志によらず異形の存在になってしまったという悲劇性は、怪人をメインとした特撮作品の大きな魅力だと言えるでしょう。
ガス人間第一号
例え変化してしまったがために手に入れた力を悪用していても、そういった悲しみをどこかにうかがわせる怪人の代表例と言えるのが、「ガス人間第一号」に登場する水野という男です。
彼はタイトルからも想像できるように、自分の体をガス状に変化させることで、神出鬼没の強盗として犯罪を繰り返します。
彼がなぜそういった体になったかと言うと、科学者による人体実験の思わぬ作用によるものでした。
そこには望まないのに異常な体と力を手に入れてしまった、彼の悲劇性が表れています。
ガス人間となってしまった水野は、自分は人間ではないから人間の法には従わないと言いながらも、ある人間の女性を深く愛しています。
彼の犯行の多くは、実はその女性のために侵していたものだったのですが、彼女の方はそのことで思い悩み、最終的には彼とともに心中するというのがこの物語の結末です。
この作品は、人ならざる者になった男と、彼に愛されたために命を絶つことになった女性の悲劇的な愛の物語として、制作されてからかなりの年数が経った今でも傑作として語り継がれています。
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美女と液体人間
また「美女と液体人間」という作品には、核実験の放射能によって怪人になってしまった人間たちが登場します。
彼らはガス人間とは異なり、人間としての意志や知能を完全に残しているわけではありませんが、それでも異形の姿に変身してしまった人間の悲劇は表現されていました。
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